「YouTubeショートは何秒が伸びるのか」を実測で知りたい人に、先に結論を書きます。自社で運営している2つのショートチャンネル、合計247本(雑学系63本・睡眠系184本)の尺別再生数を突き合わせた結果、答えは一つになりませんでした。中央値で見ると「短いほど強い」、総再生で見ると「長い側のごく数本が全部を持っていく」。この2つが同時に起きています。
具体的には、睡眠系チャンネルでは10〜19秒台の中央値が1,647回、最も本数を投じた40〜49秒台の中央値が855回で、短尺のほうが93%高い。一方で雑学系チャンネルは、60〜69秒台のわずか4本(全63本の6.3%)が合計約233万回を稼ぎ、チャンネル総再生2,839,081回の約82%を占めていました。
つまり、尺の最適化は「平均点を底上げする施策」であって、「バズを作る施策」ではありません。この記事では、その2層構造を実データの表で開示し、さらに自社が犯した失敗(最も本数を投じた尺帯が最も成績が悪かった)も隠さずに書きます。加えて、n数が小さい帯域については「これは結論にできない」と明記します。数字を盛らないことが、この記事で一番大事な部分だと考えています。
なお本記事の数値は、自社2チャンネルのYouTube Data APIから2026年9月12日に取得したものです。チャンネル名・URLは公開しません。
「秒数が再生数を決める」は半分だけ正しい
検索して出てくる「ショートは○秒が最適」という記事の多くは、他人のチャンネルの傾向か、プラットフォーム側の一般論をなぞったものです。実際に自分の手元のデータを尺帯で割ってみると、そこには2つの別々の現象が混ざっていることが分かります。
ひとつ目は分布の中心です。ある尺帯の動画を作ったとき、だいたいどのくらい再生されるのか。これは中央値で見るのが正しく、視聴維持率や離脱のしやすさといった「構造的な要因」が効いてきます。短い動画ほど最後まで見られやすいので、この層では短尺が有利になりやすい。
ふたつ目は分布の裾です。ごく稀に、アルゴリズムが特定の1本を大きく配給することがあります。これは尺ではほとんど説明できません。題材、初速、季節性、たまたま同時期に流行っていた文脈——制御しづらい変数の塊です。そしてチャンネルの総再生は、ほぼこの裾で決まります。
この2つを混ぜて「平均再生数」で語ると、話が壊れます。実際、自社の雑学系チャンネルは、ショート63本の再生合計が約284万回、単純平均は1本あたり約45,000回になります。しかし帯域別の中央値は、60秒台を除けばどれも2,600〜6,100回の範囲です。平均45,000回という数字は、たった数本の外れ値が作った幻です。「平均◯◯回」を掲げている記事は、まずこの罠を踏んでいないか疑ってください。
だから本記事の表には、中央値・平均・最大を並べて出します。中央値と平均が離れているほど、その帯域は「外れ値で持っている」ということです。
実測データ①:雑学系ショートチャンネル63本の尺別成績
1つ目は、運営している雑学系ショートチャンネルです。登録者1,120人、総再生2,839,081回、公開本数60本(APIで取得できた動画は65本、うちショート63本・ロング2本)。初投稿は2020年2月3日、直近投稿は2026年6月13日と、期間は6年以上にわたります。
以下がショート63本の尺帯別成績です。n(本数)を必ず一緒に見てください。
| 尺帯 | n(本数) | 中央値 | 平均 | 最大 |
|---|---|---|---|---|
| 10〜19秒 | 3 | 2,642 | 2,566 | 2,749 |
| 20〜29秒 | 7 | 6,076 | 5,712 | 10,964 |
| 30〜39秒 | 4 | 2,647 | 2,750 | 4,332 |
| 40〜49秒 | 6 | 2,866 | 4,143 | 12,679 |
| 50〜59秒 | 36 | 4,690 | 11,722 | 141,483 |
| 60〜69秒 | 4 | 377,206 | 582,835 | 1,576,895 |
| 110〜119秒 | 1 | 2,604 | 2,604 | 2,604 |
| 150〜159秒 | 1 | 9 | 9 | 9 |
| 170〜179秒 | 1 | 18 | 18 | 18 |
この表から読み取れることを、順に整理します。
(1)60〜69秒台の4本が異常値である。中央値が377,206回。ほかの帯域の中央値が2,600〜6,100回であることを考えると、100倍近い差です。しかも中央値が37万回ということは、4本のうち2本以上が数十万回に達しているということです。この4本の合計はおよそ233万回で、チャンネル総再生2,839,081回の約82%にあたります。全63本の6.3%が、総再生の8割を作っている。
(2)最大値の1,576,895回は、単独でチャンネル総再生の55%を超える。1本です。この1本が無かったら、このチャンネルは「総再生126万回のチャンネル」になります。後述しますが、もう一方の睡眠系チャンネル(総再生195,661回)と比べると、この1本だけで睡眠系チャンネル全体の8倍を稼いでいる計算になります。
(3)50〜59秒台は「本数の主力だが、中央値は平凡」。36本と最も多く投じた帯域で、これは全63本の57%にあたります。しかし中央値は4,690回で、20〜29秒台の6,076回より低い。一方で平均は11,722回、最大は141,483回。平均が中央値の2.5倍になっており、ここも外れ値に引っ張られています。36本のうち1本が14万回を出したため平均が跳ね上がっただけで、「50秒台を作れば1.1万回いく」という読み方は完全に間違いです。
(4)60秒を超えると、ショートの配給から外れて壊滅する。110〜119秒が2,604回、150〜159秒が9回、170〜179秒が18回。9回と18回は、ほぼ誰にも配られていない数字です。これは尺そのものというより「ショートの枠に入らなかった動画は、ショート面の配給を受けられない」という構造の話です。ここは自社データの中で最も再現性が高い部分だと考えています。
ただし(1)と(2)については、n=4という致命的な弱さがあります。統計的な結論にはできません。この点は専用の見出しで詳しく書きます。
実測データ②:睡眠系ショートチャンネル184本の尺別成績
2つ目は、運営している睡眠系ショートチャンネルです。登録者183人、総再生195,661回、公開本数184本(すべてショート)。期間は2025年12月31日から2026年9月1日までの約8か月で、雑学系チャンネルとは投稿密度がまったく違います(雑学系は6年以上で60本、睡眠系は8か月で184本)。
| 尺帯 | n(本数) | 中央値 | 平均 | 最大 |
|---|---|---|---|---|
| 10〜19秒 | 8 | 1,647 | 1,740 | 3,931 |
| 20〜29秒 | 36 | 1,177 | 1,549 | 6,402 |
| 30〜39秒 | 15 | 1,205 | 1,192 | 1,530 |
| 40〜49秒 | 122 | 855 | 861 | 2,120 |
| 50〜59秒 | 2 | 983 | 983 | 1,706 |
| 60〜69秒 | 1 | 1,066 | 1,066 | 1,066 |
こちらは雑学系と比べて、はるかに素直なデータです。理由は単純で、極端な外れ値が無いからです。全帯域を通しての最大が6,402回(20〜29秒台)で、中央値との比は5.4倍程度に収まっています。雑学系のように「1本で総再生の55%」というような事故は起きていません。
その分、尺と再生数の関係が見えやすくなっています。
(1)10〜19秒台の中央値1,647回が最高。40〜49秒台の855回に対して+93%です。ほぼ2倍。 (2)20〜29秒台は1,177回で、40〜49秒台に対して+38%。 (3)30〜39秒台は1,205回で、40〜49秒台に対して+41%。 (4)40〜49秒台の855回が全帯域で最低。そして、ここが最も多く作った帯域です。
50〜59秒台(n=2)と60〜69秒台(n=1)は、サンプルが少なすぎて何も言えません。数字としては983回・1,066回で40秒台より高いのですが、これを「50秒台のほうが強い」と読むのは危険です。1〜2本の結果は、たまたま題材が良かっただけで簡単にひっくり返ります。
この睡眠系チャンネルの実測に限れば、「30秒以下が強く、40秒台が弱い」という傾向は比較的はっきりしています。n=8、n=36、n=15、n=122 と、中央値が高い順に並べてもサンプルがそれなりに確保できている帯域同士の比較になっているためです。とはいえこれは「睡眠系という単一ジャンル・単一チャンネル・8か月」の話であり、他ジャンルにそのまま持ち込めるものではありません。
自社の失敗:最も本数を投じた尺帯が、最も成績が悪かった
ここが、この記事で一番書きたかった部分です。
睡眠系チャンネルでは、184本のうち122本(66%)を40〜49秒台に投じました。理由は運用側の都合です。台本の文字数が安定する、BGMの尺が合わせやすい、編集の型が固定できる——つまり「作りやすかった」から寄せた。よくある「作りやすい尺に寄せると量産できて有利」という一般論に、そのまま従った形です。
結果は、全帯域で中央値が最低の855回でした。
これを「投下本数のシェア」と「再生数のシェア」で並べると、機会損失の大きさがはっきりします(再生合計は各帯域の平均×本数から算出しているため、丸め誤差で総再生と数十回ずれます)。
| 尺帯 | 本数シェア | 再生シェア | 差分 |
|---|---|---|---|
| 10〜19秒 | 4.3%(8本) | 7.1% | +2.8pt |
| 20〜29秒 | 19.6%(36本) | 28.5% | +8.9pt |
| 30〜39秒 | 8.2%(15本) | 9.1% | +0.9pt |
| 40〜49秒 | 66.3%(122本) | 53.7% | −12.6pt |
| 50〜59秒 | 1.1%(2本) | 1.0% | −0.1pt |
| 60〜69秒 | 0.5%(1本) | 0.5% | ±0.0pt |
66%の制作リソースを投じた帯域が、再生の54%しか返していません。逆に、20〜29秒台は本数の19.6%で再生の28.5%を作っています。単位本数あたりの効率で見ると、20秒台は40秒台のおよそ1.4倍。8か月で122本を40秒台に投じた判断は、少なくともこのチャンネルにおいては明確な配分ミスでした。
同じことを雑学系チャンネルでもやってみます。
| 尺帯 | 本数シェア | 再生シェア | 差分 |
|---|---|---|---|
| 10〜19秒 | 4.8%(3本) | 0.3% | −4.5pt |
| 20〜29秒 | 11.1%(7本) | 1.4% | −9.7pt |
| 30〜39秒 | 6.3%(4本) | 0.4% | −5.9pt |
| 40〜49秒 | 9.5%(6本) | 0.9% | −8.6pt |
| 50〜59秒 | 57.1%(36本) | 14.9% | −42.2pt |
| 60〜69秒 | 6.3%(4本) | 82.1% | +75.8pt |
| 110秒以上 | 4.8%(3本) | 0.1% | −4.7pt |
雑学系では、睡眠系とまったく逆の構造が出ます。本数の6.3%しかない60〜69秒台が、再生の82.1%。本数の57%を占める50〜59秒台は、再生の14.9%しか作っていません。
同じ運営者が、同じ「ショート」というフォーマットで、正反対の結論を出す2つのデータを持っている。これが現実です。「ショートは何秒が正解か」という問いに、単一の数字で答えられないことの証明でもあります。関連して、ショート動画の長さは何秒が最適?では尺の決め方そのものを整理していますが、今回のような実測を重ねるほど「最適な1つの秒数」という考え方自体が弱くなっていくのを感じます。
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2チャンネルの矛盾を解くと、こういう構造になります。
中央値を決めるのは、尺と視聴維持率の関係です。短い動画ほど最後まで見られるので、完全視聴率が上がり、初期の配給テストを通過しやすい。睡眠系チャンネルのデータはこの層をきれいに映しています。極端なバズが無かったからこそ、構造的な要因がノイズに埋もれずに見えた、とも言えます。
外れ値を決めるのは、尺ではなく題材と文脈です。雑学系チャンネルの60秒台4本は、たまたま60秒台だった、というのが正直な見立てです。「60秒に近づけると伸びる」のではなく、「しっかり語り切る必要がある題材を選んだ結果、尺が60秒台になった」という因果の向きのほうが説明として自然です。実際、同じチャンネルの50〜59秒台36本の中央値は4,690回で、60秒台との間に100倍近い断絶があります。尺が1秒単位で連続的に効くなら、こんな断崖はできません。
この2層を混同すると、次のような間違った運用に走ります。
- 「60秒台が伸びるらしいから、全部60秒に引き延ばそう」→ 中身が薄まり、維持率が落ち、中央値が下がる
- 「短いほうが中央値が高いから、全部15秒にしよう」→ 語り切れない題材が増え、そもそも刺さる企画が作れなくなる
- 「平均再生数が45,000回だから、1本作れば45,000回入る」→ 外れ値を平均に含めた完全な誤読
正しい使い方は、こうです。
| 目的 | 効く変数 | 自社データでの根拠 |
|---|---|---|
| 底を上げる(外れを引かない日の再生を増やす) | 尺・維持率・冒頭1秒 | 睡眠系:10〜19秒台の中央値が40秒台の+93% |
| 天井を作る(バズを引き当てる) | 題材選定・初速・文脈 | 雑学系:60秒台4本で総再生の82% |
| 事故を避ける | ショート枠を外さない | 雑学系:110秒以上の3本が2,604回/9回/18回 |
尺の調整は1列目にしか効きません。2列目は題材の問題です。この切り分けができていないチャンネルが、「秒数を変えても伸びない」と言って迷子になります。伸びた動画と伸びなかった動画を並べて要因を分解する話は伸びた動画と伸びない動画の共通点にまとめてあります。
もうひとつの発見:バズは登録者に変換されにくい
副次的ですが、2チャンネルを並べると登録者の効率にも差が出ました。
| 項目 | 雑学系チャンネル | 睡眠系チャンネル |
|---|---|---|
| 総再生 | 2,839,081回 | 195,661回 |
| 登録者 | 1,120人 | 183人 |
| 登録者1人あたりの再生 | 約2,535回 | 約1,069回 |
| 公開本数 | 60本(ショート63本を計測) | 184本 |
| 期間 | 2020-02〜2026-06 | 2025-12〜2026-09 |
睡眠系チャンネルは、1,069回の再生ごとに1人が登録しています。雑学系は2,535回に1人。効率でいうと睡眠系が約2.4倍です。
雑学系は総再生の82%を4本のバズが作っているので、この差は「バズ由来の再生は登録につながりにくい」と解釈するのが自然です。おすすめに流れてきた1本をたまたま見ただけの視聴者は、チャンネルまで遡らない。一方、睡眠系は毎本が1,000回前後で安定的に配られており、繰り返し接触した視聴者が登録している可能性が高い。
もうひとつ、雑学系チャンネルの直近投稿(2026年6月13日)の再生は1,859回でした。総再生284万回・登録者1,120人のチャンネルの新作が1,859回です。過去のバズは、その後の底上げをほとんどしていません。100万回を出した実績があっても、次の1本は他の新規チャンネルとほぼ同じスタートラインに立たされる。ショートの配給が「チャンネルの実績」ではなく「その動画の初速」で決まっていることの、かなりわかりやすい証拠だと思っています。
したがって、副業として月次の収益や登録者を積みたいなら、狙うべきは外れ値ではなく中央値です。外れ値は狙って出せないので、「出たらラッキー」の扱いにして、設計は中央値側に寄せる。これが今の自社の方針です。
このデータをそのまま信じてはいけない5つの理由
ここは必ず読んでください。上の数字は自社の実測ですが、そのまま一般化できるものではありません。
- 理由1:n数が小さすぎる帯域がある。雑学系の60〜69秒台はn=4、10〜19秒台はn=3、110秒以上は各n=1です。睡眠系も50〜59秒台がn=2、60〜69秒台がn=1。この規模で「この尺が強い/弱い」と言うのは統計ではなく感想です。特に、記事の核である「60秒台が総再生の82%」という事実すら、n=4の話だという点は強調しておきます。
- 理由2:2チャンネルのジャンルと投稿密度が違いすぎる。雑学系は6年4か月で60本(年10本ペース)、睡眠系は8か月で184本(月23本ペース)。投稿頻度が違えばアルゴリズムの扱いも変わるため、両者の数字を直接比較するのは本来は乱暴です。本記事で両者を並べているのは、「結論が一致しないこと」自体を示すためです。
- 理由3:時期が違う。雑学系には2020年〜2022年頃の動画が含まれます。ショートの仕様も配給ロジックも当時と今では別物です。古い動画の再生数には「今日まで回り続けた累積」というボーナスも乗っています。
- 理由4:尺は交絡変数である。尺だけを変えた対照実験はしていません。長い動画は題材が重い、短い動画は題材が軽い、といった相関が必ず混ざります。観測された差の何割が「尺そのもの」の効果なのかは、このデータからは分離できません。
- 理由5:再生数の分布は正規分布ではない。極端に右に歪んでいます。平均で語ると必ず外れ値に引きずられ、中央値で語ると外れ値の寄与を見落とす。だから本記事では中央値・平均・最大を全部並べました。片方だけを引用しないでください。
正直に言えば、この5点を踏まえると、本記事から取り出せる確度の高い結論は2つだけです。
- ショートの枠を外れる長さ(自社データでは110秒以上)にすると、配給がほぼ止まる(雑学系:2,604回/9回/18回)
- 睡眠系チャンネルにおいて、40〜49秒台(n=122)の中央値は10〜19秒台(n=8)・20〜29秒台(n=36)・30〜39秒台(n=15)のいずれよりも低かった
それ以外は「うちのチャンネルではこうだった」以上のことを言っていません。他人の実測記事を読むときも、n数が書かれていないものは、この5つの穴のどれかを踏んでいると考えていいと思います。
自分のチャンネルで同じ集計を再現する手順
他人のデータを読むより、自分のデータを1回集計したほうが早いです。手順は2通りあります。
手順A:YouTube Studioだけで完結させる(本数が少ない人向け)
- YouTube Studioを開き、左メニューの「アナリティクス」→「コンテンツ」タブに入る
- 期間を「全期間」または比較したい範囲に設定する(直近28日だと新しい動画に偏るので、最低でも公開から1か月以上経った動画が対象に入る範囲にする)
- 「ショート」の一覧を表示し、指標に「視聴回数」を出す。並び替えは視聴回数の降順にしておく
- 一覧をコピーして表計算ソフトに貼り、各動画の再生時間(尺)を1列追加する。ここは手作業になります。動画一覧の各サムネイル上に表示される秒数を転記する
- 尺の列から10秒刻みの「尺帯」列を作る(例:
=FLOOR(秒数,10)) - 尺帯ごとに、本数・中央値・平均・最大の4つを出す(
COUNT/MEDIAN/AVERAGE/MAX)。平均だけを見ないこと - 本数が5本未満の帯域には「n=◯」と注記し、判断材料から外す
手順B:YouTube Data APIで自動化する(本数が多い人向け)
- Google Cloudでプロジェクトを作り、YouTube Data API v3を有効化してAPIキーを取得する
channels.listのcontentDetails.relatedPlaylists.uploadsから、アップロード動画のプレイリストIDを取るplaylistItems.listをページングしながら回し、全動画のvideoIdを集める- videoIdを50件ずつ
videos.listに渡し、part=contentDetails,statisticsを指定する contentDetails.duration(ISO 8601形式。例:PT52S、PT1M3S)を秒数に変換し、statistics.viewCountと突き合わせる- 秒数が61秒以上のものは、ショートではなく通常動画の可能性がある。サムネイルの縦横比や公開面を確認して、ショートとロングを分ける(自社の雑学系チャンネルでも、65本中2本がロングでした)
- 10秒刻みで束ね、本数・中央値・平均・最大を算出する
- 「本数シェア」と「再生シェア」の2列を作り、差分を見る。ここが本記事でいう機会損失の可視化にあたる
集計するときの注意チェックリスト
- [ ] 公開から日が浅い動画(目安で30日未満)を混ぜていないか。伸び切る前の数字が混ざると短尺が不利に見える
- [ ] 平均だけで判断していないか。必ず中央値と並べる
- [ ] n<5 の帯域を結論に使っていないか
- [ ] 限定公開・非公開・削除済みを除外できているか
- [ ] コラボや外部流入がある動画を、通常の配給と同列に扱っていないか
- [ ] 「本数シェア」と「再生シェア」の差分を出したか。ここに配分ミスが出る
この集計を一度やると、「次に作る1本を何秒にするか」ではなく「次の30本をどの帯域に何本ずつ配分するか」という問いに切り替わります。個別の1本ではなく、配分の問題として扱えるようになるのが、実測をやる最大の価値です。
実測を踏まえた自社の運用方針と、短尺を数多く試すための道具
以上を踏まえて、現時点で自社が採っている方針を公開します。これは「正解」ではなく、上のデータから導いた暫定の仮説です。
尺の配分ルール(現行)
| 帯域 | 配分の目安 | 意図 |
|---|---|---|
| 10〜29秒 | 全体の40〜50% | 中央値が最も高かった層。底を上げる主力 |
| 30〜45秒 | 全体の30〜40% | 語りが必要な題材の受け皿 |
| 46〜59秒 | 全体の10〜20% | 尺が必要な題材のみ。惰性で寄せない |
| 60秒超 | 原則0% | ショート枠を外すリスクが再生をゼロ近くまで落とす |
ポイントは、「作りやすいから」という理由で1つの帯域に寄せないことです。睡眠系で122本を40秒台に投じた失敗の再発防止策が、この配分ルールそのものです。
運用チェックリスト(1本作るたびに確認)
- [ ] この尺は題材から決まったか。編集の都合で決まっていないか
- [ ] 冒頭1秒で「何の動画か」が伝わるか(短尺化の効果は冒頭が弱いと消える)
- [ ] 60秒を1秒でも超えていないか(書き出し後の実尺で確認)
- [ ] 同じ尺帯が直近10本で7本以上を占めていないか
- [ ] 伸びなかったとき、尺のせいにする前に題材を疑ったか
短尺を数多く試すときの選択肢
「10〜29秒を主力にする」と決めた瞬間に、次の壁は制作本数になります。短い動画は1本あたりの負荷は軽いものの、検証に必要な本数は増えます。睡眠系チャンネルで統計的にマシな判断ができたのも、40〜49秒台にn=122、20〜29秒台にn=36という本数があったからでした。逆に言えば、n=3やn=4の帯域からは何も学べなかったわけです。
本数を確保する方法はいくつかあります。台本のテンプレート化、素材のストック化、外注、そしてAIによる自動生成。当サイトが開発・運営しているAIショート動画生成ツールShortyも、その選択肢の1つです。無料プランには1本30秒まで・30日で5本まで・保存7日・ショート形式のみという制約がありますが、「30秒以内の短尺を、まず5本出して手元の数字を取る」という今回の検証スタイルとは相性が良い作りになっています。もちろん他にも良いツールはありますし、自作の編集フローのほうが合う人も多いはずです。自分の投稿ペースと、検証したい帯域に合わせて選んでください。
制作本数そのものを増やす検証はYouTubeショート1日2本投稿を81本で検証に、題材の作り方は雑学動画の作り方にそれぞれまとめています。尺・本数・題材の3つは独立に検証できるので、同時に全部を変えないことをおすすめします。
よくある質問
YouTubeショートは何秒が一番再生されますか?
自社実測では答えが2つに割れました。睡眠系チャンネル184本の中央値では10〜19秒台(1,647回)が最高、雑学系チャンネル63本の総再生では60〜69秒台の4本が82%を占めました。
中央値=「普段どれくらい再生されるか」で見るなら短尺が有利で、総再生=「チャンネル全体の規模」で見るなら数本の外れ値が支配します。目的によって答えが変わる、というのが実測から出た正直な結論です。日々の再生を安定させたいなら短尺側、と考えるのが現実的です。
60秒ぎりぎりにすれば伸びますか?
伸びません。雑学系チャンネルの50〜59秒台36本の中央値は4,690回で、同チャンネル内の20〜29秒台(6,076回)より低い結果でした。
60〜69秒台の4本が突出しているのは事実ですが、n=4であり、かつ「60秒に寄せたから伸びた」のではなく「語り切る必要がある題材だったから60秒台になった」という因果の向きが自然です。尺を引き延ばして中身が薄まると、むしろ維持率が落ちて逆効果になります。
平均再生数と中央値は、どちらを見るべきですか?
中央値です。再生数の分布は極端に右へ歪んでおり、平均は外れ値1本で簡単に跳ね上がるためです。
実例として、雑学系チャンネルの50〜59秒台は中央値4,690回に対して平均11,722回と2.5倍の開きがあります。これは36本中の1本が141,483回を出したことによるもので、「50秒台を作れば1万回」という読み方は完全な誤りです。平均は「外れ値がどれくらい効いているか」を見る補助指標として使ってください。
n数が少ないデータは、どう扱えばいいですか?
判断材料から外すか、「n=◯」と必ず併記して参考値扱いにしてください。目安として、本数が5本未満の帯域は結論に使わないのが安全です。
本記事でも雑学系の60〜69秒台(n=4)、10〜19秒台(n=3)、110秒以上(各n=1)、睡眠系の50〜59秒台(n=2)、60〜69秒台(n=1)は、そのまま結論にはできないと明記しています。記事の核である「82%」という数字ですら、n=4の上に乗っている点は忘れないでください。
60秒を超えるとどうなりますか?
ショートの配給面から外れ、再生がほぼ止まります。雑学系チャンネルの実測では、110〜119秒が2,604回、150〜159秒が9回、170〜179秒が18回でした。
9回や18回は「誰にも配られていない」に近い数字です。自社データの中で最も再現性が高いのがこの部分で、書き出し後の実尺が60秒を1秒でも超えていないかは、毎回確認する価値があります。
短尺のほうが強いなら、全部15秒にすべきですか?
おすすめしません。語り切れない題材が増え、企画の幅が狭くなるからです。
自社の配分ルールでは10〜29秒を全体の40〜50%に置き、残りを30〜45秒、46〜59秒に振り分けています。睡眠系で40〜49秒台に66%を寄せた失敗の本質は「40秒が悪い」ことではなく「1つの帯域に寄せすぎた」ことでした。同じ過ちを短尺側で繰り返す意味はありません。
バズが出れば登録者は増えますか?
自社データでは、増えにくいという結果でした。雑学系は登録者1人あたりの再生が約2,535回、睡眠系は約1,069回で、バズが無い睡眠系のほうが約2.4倍効率が良い計算です。
さらに、総再生284万回・登録者1,120人の雑学系チャンネルでも、直近投稿(2026年6月13日)の再生は1,859回にとどまりました。過去のバズが次の1本を押し上げる効果は、ほとんど観測できていません。
自分のチャンネルで集計するには何本くらい必要ですか?
各尺帯に最低5本、比較の主軸にするなら20〜30本は欲しいところです。全体では最低でも50本程度が目安になります。
睡眠系チャンネルで比較的はっきりした傾向が出たのは、40〜49秒台にn=122、20〜29秒台にn=36、30〜39秒台にn=15と本数があったからです。逆に雑学系は63本しかなく、帯域あたりのnが3〜7本の層ばかりで、ほとんど何も言えませんでした。本数が足りないうちは、集計よりも投稿を優先したほうが早いです。
YouTube Studioだけで尺別の集計はできますか?
できますが、尺(再生時間)の列は手作業で転記する必要があります。アナリティクスの「コンテンツ」タブで視聴回数を書き出し、表計算ソフトで尺の列を追加して10秒刻みに束ねる流れです。
本数が100本を超えると手作業はつらいので、その規模ならYouTube Data API v3で videos.list の contentDetails.duration と statistics.viewCount を突き合わせるほうが確実です。記事中の「手順B」に具体的な流れをまとめています。
この記事の数字は他のチャンネルでも再現しますか?
再現しない可能性が高いと考えています。ジャンル、投稿頻度、公開時期、題材の性質がすべて違うためです。
自社の2チャンネルですら、片方は「短いほど中央値が高い」、もう片方は「60秒台の4本が総再生の82%」と正反対の結論が出ています。同じ運営者・同じフォーマットでこれだけ割れる以上、他人のデータを自分のチャンネルの根拠にするのは無理があります。この記事は「集計のやり方」と「読み間違えのパターン」の参考として使い、数字そのものはご自身のチャンネルで取り直してください。
まとめ
自社2チャンネル・合計247本のショートを尺帯別に集計した結果を、改めて整理します。
- 中央値では短尺が有利。睡眠系チャンネル184本では、10〜19秒台の中央値1,647回に対し、40〜49秒台は855回で+93%の差。20〜29秒台(1,177回)、30〜39秒台(1,205回)も40秒台を上回った
- 総再生は外れ値が支配する。雑学系チャンネルでは60〜69秒台のわずか4本(全63本の6.3%)が合計約233万回を稼ぎ、総再生2,839,081回の約82%を占めた。うち最大の1本は1,576,895回で、単独で総再生の55%超
- 最も本数を投じた帯域が、最も弱かった。睡眠系で40〜49秒台に122本(66%)を投じたが、中央値は全帯域最低。本数シェア66.3%に対して再生シェアは53.7%で、12.6ptの機会損失が出ていた
- 60秒を超えると配給が止まる。110〜119秒が2,604回、150〜159秒が9回、170〜179秒が18回。ここが自社データで最も再現性が高い
- バズは登録者に変換されにくい。登録者1人あたりの再生は雑学系が約2,535回、睡眠系が約1,069回。さらに、284万回のチャンネルでも直近投稿は1,859回だった
- そして、これらは結論にできない。雑学系の60秒台はn=4、10〜19秒台はn=3。n数の小ささ、ジャンル差、投稿密度差(年10本 vs 月23本)、時期差、交絡変数——どれも解消できていない
尺の最適化は、外れを引かない日の再生を底上げする施策です。バズを作る施策ではありません。この2つを混同したまま「何秒が最適か」を探し続けると、いつまでも答えが出ません。
やるべきことは単純で、自分のチャンネルの動画を10秒刻みで束ね、n数つきで中央値・平均・最大を出し、「本数シェア」と「再生シェア」の差分を見る。それだけです。うちの場合、その1回の集計で「122本を最弱の帯域に投じていた」ことが分かりました。他人の実測記事より、自分の手元の数字のほうが必ず強い根拠になります。