YMM4で立ち絵の口が動かないとき、最初に疑うべきはソフトの不具合ではありません。実際に詰まるポイントは、ほぼ「音声アイテム(ボイスアイテム)とキャラクターの紐付け」か「立ち絵素材のレイヤー・ファイル命名規則」のどちらかに集約されます。設定画面を上から順に触り直す前に、新規プロジェクトを1つ作って標準キャラクター+2〜3秒の短いセリフだけを置いてみてください。そこで口が動けば原因は素材側、動かなければソフト側や設定側と、1分で切り分けられます。
この記事は、顔出しなしのゆっくり解説・ショート動画を量産する立場から、「全く動かない」「たまにしか動かない」「口が開きっぱなし」「特定のキャラだけ動かない」「音声を差し替えたら止まった」の5症状を、原因・確認箇所・対処手順の3点セットで逆引きできるようにまとめたものです。あわせて、縦型9:16のショート動画では「口が動いていても視聴者には見えていない」という別種の問題が起きやすいので、その実務的な対処も後半に置きました。
なお本記事は2026年9月時点で公開されている公式FAQと解説記事をもとにしています。YMM4はバージョン更新が速いソフトなので、画面の項目名や既定値がお使いのバージョンと異なる場合があります。公開情報で裏取りできなかった点は、その旨を明記しています。
YMM4はあくまで編集工程の道具です。前後の工程まで含めた流れはずんだもん動画の作り方(ライセンスの落とし穴つき)で確認できます。
症状別・原因切り分け表:まず自分のケースを特定する
結論から言うと、口パクのトラブルは症状ごとに疑うべき場所がはっきり分かれます。全部を順番に試す必要はありません。下の表で自分の症状の行だけを見て、そこから作業を始めてください。
| 症状 | 最有力の原因 | 確認箇所 | 対処手順 |
|---|---|---|---|
| 全く動かない(まばたきもしない) | 立ち絵の種類・素材フォルダの割り当てが未完了、または口パーツが登録されていない | キャラクターの編集 → 立ち絵 → 種類/素材フォルダ/口 | 種類(シンプル/動く立ち絵/PSD立ち絵)を選び直し、素材フォルダを指定し直してから、口のデフォルトパーツを再選択する |
| まばたきはするのに口だけ動かない | 口パーツの命名規則違反、またはPSD立ち絵素材マネージャーで「種類」が口パクになっていない | 「口」フォルダのファイル名/PSD立ち絵素材マネージャーの種類欄 | 閉じた口を「パーツ名.0.png」、開いた口を「パーツ名.png」に改名。PSDなら該当グループの種類を「口パク」に設定する |
| たまにしか動かない・小声のときだけ止まる | ボイスアイテムの音量が低く、音量口パクの判定閾値に届いていない | ボイスアイテムの「音量」「口パク感度」 | 音量を上げる、または口パク感度を段階的に上げて、短いセリフで再確認する |
| 口が開きっぱなし/閉じっぱなし | 表情アイテム側の設定が口の状態を固定している | 表情アイテムの「口を開けたままにする」等のチェック、レイヤーの上下関係 | 該当チェックを外し、上から「立ち絵 → 表情アイテム → セリフ」の順にレイヤーを並べ直す |
| 特定のキャラだけ動かない | そのキャラのセリフ(ボイスアイテム)が二重に置かれている/別キャラに割り当てられている | タイムラインの該当区間、ボイスアイテムのキャラクター欄 | 重なっているボイスアイテムを1つに整理する。YMM4は下に置いたアイテムが優先されるため、上のアイテムは口パクに反映されない |
| 音声を後から差し替えたら止まった | 差し替えでボイスアイテムが外部音声扱いになった、または立ち絵アイテムの時間範囲から外れた | 差し替え後のアイテム種別、立ち絵アイテムの長さ | 立ち絵アイテムをセリフ全体を覆う長さに伸ばす。外部wavなら音量口パクの感度・音量を調整する |
| プレビューは動くのに書き出すと変 | 立ち絵アイテムの分割、または重い素材による描画負荷 | 立ち絵アイテムの分割箇所、素材の解像度 | 立ち絵アイテムはできるだけ分割せず1本で伸ばす。素材の解像度を必要十分まで落とす |
この表の使い方のコツは、「症状」ではなく「直前に何を変えたか」も一緒に思い出すことです。素材を差し替えた直後なら素材側、YMM4を更新した直後なら設定の再指定、音声を作り直した直後なら紐付け——というように、変更イベントから逆引きすると原因の候補が一気に絞れます。
立ち絵そのものが画面に出ていない場合は口パク以前の問題なので、先にYMM4で立ち絵が表示されない側の切り分けを済ませてください。表示と口パクは別レイヤーの話で、混ぜて調べると遠回りになります。
設定を触る前に1分:新規プロジェクト再現テストで「素材側かソフト側か」を割る
最初にやるべきは設定の見直しではなく、再現テストです。理由は単純で、口パクの不具合は「素材が規格に合っていない」「設定の指定が抜けている」「プロジェクト固有の事故(アイテムの重なり等)」の3層に分かれており、どの層かを決めないと修正が当たらないからです。
次の手順なら、だいたい1分で層が確定します。
- YMM4で新規プロジェクトを作る(既存プロジェクトは開かない)
- キャラクターの編集で、YMM4に最初から入っている標準的なキャラクター(ゆっくり霊夢など、追加素材を入れていないもの)を選ぶ
- タイムラインに「おはようございます」程度の2〜3秒のセリフを1つだけ置く
- 立ち絵アイテムを1つだけ置き、セリフ全体を覆う長さに伸ばす
- その区間だけ再生して、口が動くかを見る
判定はこうなります。標準キャラで動く → 原因は素材側か、元プロジェクト固有の事故。標準キャラでも動かない → 原因はYMM4側の設定・環境。前者なら次に自分の素材を同じ新規プロジェクトに読み込んで再テストし、そこで止まれば素材の命名規則を疑う。後者ならYMM4のバージョンや初期設定を疑う、という順番です。
この再現テストが効くのは、既存プロジェクトには「昔の設定の残骸」が積み重なっているからです。セリフが二重に置かれている、表情アイテムが古い設定のまま残っている、立ち絵アイテムが細切れに分割されている——こうした事故は、まっさらなプロジェクトでは絶対に再現しません。逆に言えば、新規プロジェクトで動いたのに本番プロジェクトで動かないなら、探すべきはソフトの設定ではなくタイムライン上のアイテム配置です。
もしYMM4そのものが立ち上がらない・起動途中で落ちるといった状態なら、口パク以前に環境が壊れている可能性があります。その場合はYMM4が起動できない側の対処を先に済ませてから戻ってきてください。
口パクが動く4つの条件と、立ち絵3種類の違い
口パクは「立ち絵を置けば勝手に動く機能」ではなく、4つの条件が同時に満たされたときだけ動きます。逆に言えば、この4つを順に確認すれば漏れません。
- キャラクターに立ち絵が割り当てられている:キャラクターの編集で、立ち絵の「種類」と「素材フォルダ」が設定されていること
- 口パーツが口パクとして認識されている:動く立ち絵なら命名規則、PSD立ち絵なら素材マネージャーの「種類」が口パクになっていること
- 同じキャラのボイスアイテムが存在し、時間範囲が重なっている:立ち絵アイテムが、そのセリフの区間を覆っていること
- 音量・感度が判定を通る:音量口パクの場合、音声のレベルが口を開く判定に届いていること
このうち1と2は「素材とキャラ設定の話」、3と4は「タイムラインとボイスアイテムの話」です。冒頭の再現テストは、この2グループのどちらが壊れているかを分けるための作業だと考えてください。
立ち絵の種類によって、口パクの仕組みと詰まりどころは変わります。公式FAQで案内されている3方式を整理すると次のとおりです。
| 立ち絵の種類 | 素材の形 | 口パクの仕組み | 詰まりやすい点 |
|---|---|---|---|
| シンプル立ち絵 | 表情ごとに1枚ずつのPNG | 「デフォルトの立ち絵」に口を閉じた絵、「デフォルトの表情」に口を開けた絵を指定し、ボイスアイテムがある間だけ開いた絵に切り替わる | 口閉じ/口開きの割り当てが逆、または同じ絵を両方に指定している |
| 動く立ち絵 | 「眉」「目」「口」「髪」「顔色」「体」「他」「後」のフォルダに分けたPNG群 | ファイル名の連番規則でYMM4が閉じ/中間/開きを判定する | フォルダ名が規格どおりでない、連番の付け方が旧式のまま |
| PSD立ち絵 | レイヤー構造を保った1枚のPSD | PSD立ち絵素材マネージャーで口グループに「口パク」の種類を割り当てる | 種類の割り当て忘れ、チェックを複数入れて口が二重表示になる |
シンプル立ち絵は公式FAQでも「デフォルトの立ち絵に口を閉じた表情、デフォルトの表情に口を開けた表情を設定する」と明記されています。ここが逆だと、しゃべっていないときに口が開き、しゃべると閉じるという逆位相の動きになります。「口パクしない」ではなく「口パクが変」と感じるケースの多くはこれです。
原因1:音声アイテムとキャラクターの紐付けが切れている
最も多い原因は、素材でも設定でもなく紐付けです。YMM4の口パクは「そのキャラクターのボイスアイテムが鳴っている区間」を見て動くため、ボイスアイテム側のキャラクター指定が別人になっていたり、そもそもボイスアイテムではなく音声ファイルとして置かれていたりすると、立ち絵は無反応のままになります。
確認は次の順です。
- タイムラインで動かないキャラのセリフをクリックし、キャラクター欄が正しい名前になっているか見る
- 立ち絵アイテムのキャラクターも同じ名前かを見る(別キャラの立ち絵に別キャラのセリフを当てても口は動きません)
- 同じキャラのセリフが同じ区間に2つ以上ないかを確認する
- 立ち絵アイテムの開始・終了が、セリフの開始・終了を完全に覆っているかを確認する
3番目の「セリフの重なり」は特に見落としやすい事故です。YMM4はタイムライン上で下に置かれたアイテムを優先する仕様のため、同じキャラのボイスアイテムが2つ重なっていると、口パクに反映されるのは下側の1つだけになります。上に置いたセリフを編集し続けていると「聞こえている音声と口パクの根拠が別アイテム」というねじれが起き、結果として口が動かない・タイミングがずれる、という症状になります。解説記事でもこの重なりが「口パクしない」の代表的な原因として挙げられています。
対処はシンプルで、重なっているボイスアイテムを削除して1本にすること。どうしても字幕だけを別に出したい場合は、字幕表示専用のキャラクターを別途作って、そちらに字幕用アイテムを持たせる方法が紹介されています。音声を出さずに字幕だけ出す運用は、口パクの根拠を奪うので、キャラクターを分けて衝突を避けるのが安全です。
4番目の時間範囲も地味に効きます。立ち絵アイテムが短くてセリフの後半にかかっていないと、その区間だけ立ち絵が消える(=口も動かない)ことになります。立ち絵アイテムは細かく分割せず、シーン単位で1本に伸ばして使うのが定石です。分割すると、反復アニメーションが分割点で初期位置に戻る挙動も報告されています。
原因2:素材のレイヤー/ファイル命名規則が規格からズレている
紐付けに問題がなければ、次は素材側です。ここが本記事でいちばん具体的に確認できる部分で、YMM4公式FAQ「動く立ち絵素材の作り方」には命名規則が明記されています。
動く立ち絵の素材フォルダは、「眉」「目」「口」「髪」「顔色」「体」「他」「後」という日本語のフォルダ名で作ります。このフォルダ名から外れていると、YMM4は口や目のパーツとして認識しません。英語名(mouth、eyeなど)で配布されている海外素材や、自分で作った素材をそのまま入れて動かない場合は、まずここを疑ってください。
ファイル名の規則は、機能ごとに次のように分かれています。
| 対応させたい機能 | 必要なファイル名 | 意味 |
|---|---|---|
| まばたき(目) | パーツ名.0.png / パーツ名.1.png(任意枚数) / パーツ名.png |
閉じた状態/中間フレーム/開いた状態 |
| 音量口パク(口) | パーツ名.0.png / パーツ名.png |
閉じた状態/開いた状態 |
| あいうえお口パク(口) | パーツ名.a.png〜パーツ名.o.png / パーツ名.0.png / パーツ名.png |
各母音の口形/閉じた状態/サムネイル用の開いた状態 |
眉・髪・顔色・体・後などのパーツは、ファイル名が自由です。つまり厳密な命名が要るのは「目」と「口」だけ、と覚えておくと確認が速くなります。
ここで実務上いちばん引っかかるのが、開いた状態のファイル名には数字を付けないという点です。閉じた口を00.pngのまま、開いた口を01.pngのように連番で置いていると、YMM4は「閉じ/開き」のペアとして解釈しません。既存の配布素材が00.png 00a.pngのような旧来のナンバリングで配られている場合は、00.0.png(閉じ)と00.png(開き)の形に改名する必要があります。解説記事でも、この改名を怠って「最後の画像だけが反映される」状態になる例が報告されています。
もうひとつ、公式FAQには「ファイル名に拡張子以外の『.』がついているファイルは一覧に表示されない」という注記があります。これは仕様どおりの挙動で、00.0.pngのような中間ファイルがパーツ選択の一覧に出てこなくても異常ではありません。「一覧に無いから登録できていない」と誤解して作り直すのは、時間の無駄になります。
PSD立ち絵の場合は、ファイル名ではなくPSD立ち絵素材マネージャーの設定が要です。口を開けたパーツに口を閉じたパーツを追加し、「種類」を「口パク」に設定するところまでやって初めて口パクが有効になります。ここを「まばたき」のまま、あるいは未設定のままにしているケースが非常に多いです。また、立ち絵アイテムのレイヤー設定でチェックの付いたパーツを複数選ぶと口が二重に表示されるので、選ぶのは1つだけにします。
なお、PSDToolなどのツールで使われる「!」「*」「:」といったレイヤー名の接頭辞ルールについては、YMM4のPSD立ち絵がどこまでそれを解釈するのかを公開情報から確認できませんでした。配布素材の説明書に接頭辞の指定がある場合は、その配布元の指示に従うのが確実です。
ここまでの手順、1本ぶんまるごと自動でやりますShorty はテーマを入力するだけで、台本・AI音声・字幕・BGMを揃えた雑学ショート動画を生成します。無料プランは30日5本まで。無料で作ってみる原因3:音量・口パク感度・表情アイテムによる上書き
「全く動かない」ではなく「たまに動く」「口が開きっぱなし」の場合は、素材ではなく判定と上書きの問題です。
まず「たまに動く」。音量口パクは音声のレベルを見て口の開閉を決めるため、音量が小さいセリフや短いセリフでは判定に届かず、口が動かないことがあります。ボイスアイテムには音量と口パク感度の項目があり、解説記事では初期値が音量50%・口パク感度100%と紹介されています。実際に「テスト」のような短い単語で動かなかったものが、音量を上げる、あるいは感度を上げることで動き出した、という報告があります。ただし感度を上げすぎると口が開きっぱなしに近い挙動になるため、いきなり最大にせず、段階的に上げて短いセリフで都度確認してください。既定値はバージョンによって異なる可能性があります。
なお、音量を上げて口パクを通した結果、書き出した動画全体の音量バランスが崩れることがあります。口パク判定のための音量と、視聴時に心地よい音量は別物なので、口パクが動いたらマスター側で全体音量を整え直してください。
次に「口が開きっぱなし」。これは表情アイテムが原因であることが多いです。表情アイテムには「口を開けたままにする」といった、口の状態を固定するオプションがあり、これが有効だと口パクより優先されて口が開いたまま止まります。解説記事では、表情を変えつつ口パクもさせたい場合の並べ方として、上から「立ち絵 → 表情アイテム → セリフ」の順にレイヤーを配置し、表情はセリフ自体に適用する設定にする方法が案内されています。YMM4は表情アイテムも「下に置いたものが優先」される仕様なので、意図しない表情アイテムが下に残っていると、そちらが勝ってしまいます。
チェックの順番としては次のようになります。
- 該当区間に表情アイテムが置かれていないか確認する
- 置かれていれば、口の状態を固定するチェックを外す
- それでも直らなければ、表情アイテムを一時的に削除して口が動くか見る
- 動いたら、表情はセリフ側に設定する方式に切り替える
「表情アイテムを消したら直る」なら原因は確定です。表情アイテムは便利ですが、口パク・まばたきと競合しうる機能だという前提で扱うのが安全です。
音声を後から差し替えた/外部wavを使う場合の落とし穴
「昨日まで動いていたのに、音声を差し替えたら止まった」は、原因の特定が難しいわりに理由がはっきりしているパターンです。
YMM4の口パクは大きく2系統あります。ひとつは音声の音量レベルで口を開閉する音量口パク。もうひとつは母音ごとの口形を切り替えるあいうえお口パクで、こちらは公式の素材規格でも.a.png〜.o.pngという専用の命名が定義されています。あいうえお口パクは、音声合成側から母音のタイミング情報が得られる前提の仕組みで、解説記事ではVOICEVOXやCeVIO AI、A.I.VOICE、COEIROINK2といったエンジンで生成したボイスアイテムが対象として挙げられています。AivisSpeechなど個別エンジンの対応可否については、公開情報で明確に確認できませんでした。使用するバージョンの公式情報を確認してください。
ここから導かれる注意点は次のとおりです。
- YMM4内で音声合成エンジンから生成したボイスアイテムと、外部で録音・生成したwavを読み込んだアイテムは、口パクの根拠が同じとは限らない
- 外部wavに差し替えると、母音情報が失われて音量ベースの判定だけになる可能性がある。あいうえお口パク前提の素材だと、動きが単調になったり止まったように見えたりする
- 自分の声で録音したwavを使いたい場合、同じ内容のセリフを音声合成側にも打ち込み、その音量をゼロにして口パクの根拠だけ確保する、という運用が紹介されている
差し替え作業そのものにも罠があります。ボイスアイテムを削除して新しい音声を置き直すと、長さが変わって立ち絵アイテムの範囲から外れる、置き直したアイテムが既存アイテムの上に重なる、キャラクター指定が既定値に戻る、といった事故が同時に起きがちです。差し替え後は必ず、(1)キャラクター指定、(2)重なりの有無、(3)立ち絵アイテムの長さ、の3点をセットで確認してください。
字幕まわりも同時に崩れやすいポイントです。セリフを差し替えると文字数が変わり、縦画面では改行位置が破綻します。口パクの修正ついでにYMM4の字幕改行と折り返し設定も見直しておくと、書き出し後の作り直しを減らせます。
ショート動画(9:16)で口パクを"見える"ようにする実務チェックリスト
ここが横型の解説記事ではあまり触れられない、ショート量産勢だけが踏む地雷です。縦型9:16では、口パクが「動いていない」のではなく「見えていない」ケースがかなりの割合を占めます。1080×1920の縦画面にバストアップの立ち絵を置くと、顔の占有面積は横型より小さくなりがちで、口の開閉が数ピクセル程度しか動いていないと、スマホの小さな画面では静止画と区別がつきません。「口パクしない」と感じたら、まず拡大して確認してください。
実務上のチェックリストは次のとおりです。
- 確認は等倍ではなく拡大で:プレビューを200〜400%に拡大し、口だけを見て開閉しているか判定する。ここで動いていれば設定は正常で、以降は見せ方の問題
- 顔が画面の縦1/3を占めるくらいまで寄せる:全身立ち絵をそのまま縦画面に置くと顔が小さすぎる。バストアップ〜胸から上のトリミングで、顔の高さが画面全体の25〜35%程度になるのが目安
- 口の開閉が見えない場合の拡大率の目安:横型と同じ設定から縦型に移す場合、立ち絵の拡大率を150〜200%程度まで上げると口の動きが視認できるようになることが多い。ただし素材の解像度を超えて拡大すると輪郭がぼやけるので、元素材の解像度を先に確認する
- 画面下部のテロップと立ち絵の重なりを避ける:縦画面では下部30%前後にテロップやUI(再生バー、アカウント名など)が重なる。立ち絵の顔がこの帯に入っていると、口が隠れて口パクが伝わらない。顔は上半分〜中央、テロップは下1/3、と役割を分けて配置する
- 背景とのコントラストを確保する:口の内側が暗い素材を暗い背景に置くと、開閉が視認できない。口元だけ明度差が出るよう背景を調整する
- 書き出し後に必ずスマホで確認する:PCの大画面では見えていた口の動きが、スマホでは判別できないことがある
制作フロー全体を見直したい場合は、雑学動画の作り方で台本から書き出しまでの工程を整理しておくと、口パクの調整をどの工程に入れるかが決めやすくなります。
ショートを継続的に量産する段階では、「立ち絵と口パクを自前で作り込む」以外の選択肢も比較対象に入ります。工程ごとにざっくり整理すると、YMM4は素材を自分で用意する代わりにキャラクターと演出を完全にコントロールできる方式、テンプレート型の生成ツールは自由度と引き換えに立ち絵・音声・字幕の同期を自動で処理する方式です。後者のひとつに、当サイトが開発・運営しているShortyがあります。無料プランは1本30秒まで・30日で5本まで・保存7日・ショート(縦型)形式のみという制約があるため、本数を出す運用や長尺には向きませんが、口パクや字幕同期の調整に時間を取られずに縦型の構成だけを試したいときの検証用としては使えます。どちらが優れているという話ではなく、キャラクターの作り込みが価値になる企画はYMM4、量とテンポが価値になる企画は自動化寄り、と目的で選ぶのが現実的です。
なお、素材の配布元が古いバージョン向けの規格で素材を作っている場合、命名を直しても口パクが期待どおりに動かないことがあります。特に、あいうえお口パクに対応していない素材(口の開閉2枚だけの素材)では、母音ごとの口形は原理的に再現できません。配布ページの更新日と対応バージョンの記載を確認し、古い素材で無理をせず、対応が明記された素材に乗り換える判断も必要です。
よくある質問
口パクだけ動かず、まばたきは正常に動くのはなぜ?
まばたきと口パクは別の判定で動くためです。まばたきは時間ベースで自動再生されますが、口パクは音声の存在とレベルを見ます。つまり「まばたきは動く=素材とキャラ設定はおおむね正常」で、疑うべきは音声側の紐付けか口パーツの命名規則です。
具体的には、口のファイル名がパーツ名.0.png(閉じ)とパーツ名.png(開き)のペアになっているか、PSD立ち絵なら素材マネージャーの「種類」が「口パク」になっているかを確認してください。まばたきが動いている時点でフォルダ構成自体は正しい可能性が高いので、確認範囲は「口」フォルダに絞れます。
音量を上げないと口が動かないのは仕様ですか?
音量口パクは音声レベルを見て開閉を決めるため、レベルが低いと判定に届かない挙動は仕様の範囲です。ボイスアイテムの音量と口パク感度で調整します。
解説記事では初期値として音量50%・口パク感度100%が紹介されており、短い単語では動かなかったものが音量や感度を上げて動き出した例が報告されています。ただし感度を上げすぎると口が開きっぱなしに近くなるので、短いセリフで確認しながら段階的に調整してください。既定値はバージョンによって異なる可能性があります。
特定のキャラだけ口パクしません。どこを見ればいいですか?
そのキャラのセリフ(ボイスアイテム)が同じ区間に二重に置かれていないかを最初に確認してください。YMM4は下に置いたアイテムが優先されるため、重なっていると口パクに反映されるのは下側の1つだけです。
上のアイテムを編集し続けていると、聞こえる音声と口パクの根拠が別アイテムになり、結果として動かない・ずれるという症状になります。重なりを解消して1本にするのが対処です。字幕だけ別に出したい場合は、字幕表示専用のキャラクターを作って分離する方法が紹介されています。
口が開きっぱなしで閉じません。原因は?
表情アイテム側で口の状態を固定する設定が有効になっている可能性が高いです。該当区間の表情アイテムを確認し、口を開けたままにするチェックを外してください。
それでも直らない場合は、表情アイテムを一時的に削除して口が動くかを確認します。動いたら原因は確定です。表情を変えつつ口パクもさせたい場合は、上から「立ち絵 → 表情アイテム → セリフ」の順に並べ、表情をセリフ側に適用する方式に切り替える方法が案内されています。
自作の立ち絵素材で口パクさせたいのですが、必須の命名規則は?
「目」と「口」のフォルダだけ厳密です。閉じた状態をパーツ名.0.png、開いた状態をパーツ名.png(数字なし)にします。眉・髪・顔色・体などのファイル名は自由です。
フォルダ名は「眉」「目」「口」「髪」「顔色」「体」「他」「後」という日本語名で作る必要があり、英語名では認識されません。まばたきは.0(閉じ)と.1以降の中間フレーム、末尾数字なし(開き)の並びになります。あいうえお口パクに対応させたい場合は、追加で.a〜.oの口形ファイルが必要です。
PSDファイルの立ち絵で口パクが動きません。どこの設定ですか?
PSD立ち絵素材マネージャーで、口のパーツに「種類:口パク」を割り当てる工程が抜けているケースがほとんどです。口を開けたパーツに閉じたパーツを追加し、種類を口パクに設定します。
設定後は、立ち絵アイテムのレイヤー設定でチェックの付いたパーツを1つだけ選んでください。複数選ぶと口が二重に表示されます。また、PSDはPhotoshopで保存する際に互換性を優先する設定にしておくと読み込みが安定する、という運用も紹介されています。
自分の声で録音したwavでも口パクさせられますか?
音量ベースの口パクであれば可能性はありますが、母音単位のあいうえお口パクは、母音のタイミング情報がある音声が前提です。外部wavだけでは同等の動きにならないことがあります。
回避策として、同じ内容のセリフを音声合成側にも入力し、その音量をゼロにして口パクの根拠だけ確保しつつ、実際に聞こえる音は自分の録音にする、という運用が紹介されています。外部タイミング情報(.lab)を使う補助ツールも個人開発で公開されていますが、対応範囲は各ツールの説明を確認してください。
YMM4をアップデートしたら口パクが止まりました。設定は消えますか?
更新後にキャラクター設定や立ち絵の割り当てが期待どおりに引き継がれず、再設定が必要になる場合があると報告されています。まずキャラクターの編集で立ち絵の種類と素材フォルダを開き、指定が残っているか確認してください。
その際、口や目のデフォルトパーツの選択が空になっていないかも見ます。素材フォルダのパスを別ドライブや別フォルダに移動していると、参照が切れて同様の症状になります。素材はプロジェクトごとに移動しない固定の場所に置くのが安全です。
縦型ショートで口が動いているのに動いて見えません。どうすれば?
プレビューを200〜400%に拡大して口だけを見てください。そこで開閉していれば設定は正常で、問題は見せ方です。立ち絵の拡大率を上げ、顔の高さが画面の25〜35%程度を占めるように寄せます。
あわせて、画面下部30%前後はテロップや再生UIが重なる帯なので、顔がその帯に入らないよう配置します。口の内側と背景の明度差が小さいと開閉が視認できないため、背景側の調整も有効です。最終確認は必ずスマホの実機で行ってください。
立ち絵アイテムは分割してもいいですか?
できるだけ1本に伸ばして使うのが無難です。分割すると、その境目で反復アニメーションが初期位置に戻る挙動が報告されており、口パクやまばたきが不自然に途切れる原因になります。
表情を途中で変えたい場合は、立ち絵アイテムを切るのではなく表情アイテムを重ねる方が安全です。ただし表情アイテムは口パクと競合しうるので、口の状態を固定する設定が入っていないかを毎回確認してください。
この作業の前後でよく問題になるのが同じ系統の設定です。詳しくはYMM4の音量が小さいときの3層切り分けにまとめています。
まとめ
YMM4で立ち絵が口パクしないとき、実際に効く順番は次のとおりです。まず新規プロジェクトに標準キャラと短いセリフだけを置いて再現テストを行い、素材側かソフト側かを1分で割る。次に、症状別の切り分け表で自分のケースの行だけを見る。そのうえで、紐付け(ボイスアイテムのキャラクター指定・セリフの重なり・立ち絵アイテムの時間範囲)、素材の命名規則(「目」「口」フォルダの.0付き閉じ/数字なし開きのペア、PSDなら素材マネージャーの種類「口パク」)、音量と口パク感度、表情アイテムによる上書き——この4点を順に潰していきます。
原因の大半はYMM4の不具合ではなく、設定と素材の噛み合わせです。逆に言えば、設定画面を闇雲に触るより、変更イベント(素材を替えた/YMM4を更新した/音声を差し替えた)から逆引きしたほうが早く直ります。
そしてショート動画を作るなら、直った後にもう一手間かけてください。縦型9:16では口の動きが物理的に見えづらく、設定が正常でも視聴者には伝わらないことがあります。拡大率と配置、テロップとの重なりまで含めて調整して初めて、「口パクが機能している動画」になります。配布元の素材が古い規格のままだと命名を直しても限界がある点も含め、素材選びの段階から対応状況を確認しておくのが、結局いちばん時間の節約になります。