AviUtlの音ズレを直す最短ルートは、ネットに落ちている対処法を上から順に試すことではありません。自分の音ズレが「どの層」で起きているのかを先に確定させることです。
AviUtlの音ズレは、次の3層に分かれます。
- 第1層:編集中(AviUtlのプレビュー)の時点ですでにズレている
- 第2層:AviUtl上では合っているのに、書き出したMP4だけズレる
- 第3層:手元のMP4は合っているのに、YouTubeにアップした後だけズレる
この3層は、原因も対処も、直すのにかかる時間もまったく違います。第1層は素材の読み込みとフレームレートの問題、第2層は音声エンコーダの遅延と出力設定の問題、第3層はアップロード用マスターファイルの作り方の問題です。第1層の定番対処である「L-SMASH Worksの設定でVFR→CFRを指定する」を第3層の症状に適用しても、当然ながら1ミリも改善しません。逆もまた同じです。
多くの解説記事が「AviUtl 音ズレの原因10選」のような羅列で終わってしまうのは、この切り分けをしないまま全原因を並べているからです。読者側は「で、自分はどれ?」が分からないまま、関係ない設定を10個いじって、余計に壊れた状態でスタート地点に戻ることになります。
この記事は、ゆっくり解説・ボイスロイド実況・雑学ショートをAviUtlで作っている顔出しなし副業層向けに、(1)3層の診断フローチャート、(2)症状→原因→対処の対応表、(3)ゆっくり/ボイロ系だけに起きる特有の音ズレ、(4)そもそもズレない素材の作り方、の順で組み立てています。情報は2026年8月時点の公開情報にもとづいています。
この記事はAviUtl側の設定に絞ります。台本・音声・立ち絵を含めた1本の作り方はずんだもん動画の作り方を最初の1本から解説したガイドにまとめました。
まず3分でやる切り分け:あなたの音ズレは第何層か
結論から言うと、対処を始める前に「AviUtlのプレビュー」「書き出したMP4をローカル再生」「YouTubeの再生」の3か所で同じ箇所を確認するだけで、原因の候補は10個から2〜3個に絞れます。
以下の順に確認してください。分岐の番号どおりに進めると、自分がどの層にいるかが確定します。
- AviUtlの拡張編集タイムラインで、音がズレている箇所まで再生ヘッドを動かしてプレビューする。 - ズレている → 2へ(第1層の可能性が高い) - ズレていない(合っている) → 4へ
- タイムラインの先頭(0フレーム)付近を再生する。 - 先頭からすでにズレている → 第1層A:一定量ズレ。読み込み時点のオフセット、音声の位置調整フィルタ、音声オブジェクトの再生位置が犯人になりやすい - 先頭は合っていて、後半に行くほどズレ幅が大きくなる → 3へ
- 素材動画のフレームレートが可変(VFR)でないかを確認する。 - スマホ撮影・画面録画・ゲーム録画・配信アーカイブのDL素材のいずれか → 第1層B:VFR起因の累積ズレ。これが編集中にズレるケースの最頻値 - どれでもない(自分で作ったCFR素材だけ) → 第1層C:AviUtl側の設定ミス(システムの設定、最大フレーム数、サンプリングレート不一致)
- 書き出したMP4を、AviUtl以外のプレイヤー(VLC、Windowsのメディアプレーヤーなど)でローカル再生する。 - ズレている → 第2層:出力・エンコード起因。音声エンコーダの遅延、ディレイカット設定、音声コーデックの選択が犯人 - ズレていない → 5へ
- YouTubeにアップした動画を、別ブラウザ/別端末で再生する。 - ズレている → 第3層:アップロード後のトランスコード起因。マスターファイルがVFRのまま、または音声トラック長と映像トラック長が一致していないケース - 特定の端末・特定のブラウザだけズレる → 第3層外:再生環境側の問題。Bluetoothイヤホンの遅延、ハードウェアアクセラレーション、ドライバなど。動画ファイル自体は正常なので、AviUtl側をいじっても直りません
この5ステップで層が確定したら、該当するH2まで飛んでください。層が確定していない状態で設定をいじるのが、AviUtlの音ズレで一番時間を溶かすパターンです。特に「AviUtlのシステムの設定」は一度いじると全プロジェクトに影響するグローバル設定なので、関係ない層の症状に対して適用すると、直っていた他の案件まで壊れます。
なお、切り分けの前に必ずプロジェクトファイル(.aup/.aup2)と素材フォルダのバックアップを取ってください。入力プラグイン設定を変えると、既存プロジェクトの読み込み結果が変わり、タイムライン上のオブジェクト長がずれることがあります。
症状→原因→対処の対応表(2026年8月時点)
結論:症状の出方(先頭からズレるのか、だんだんズレるのか、どこで確認したときにズレるのか)だけで、原因候補はほぼ一意に決まります。
| 層 | 症状の出方 | 主な原因 | 最初に試す対処 | 直らないときの次手 |
|---|---|---|---|---|
| 第1層A | プレビュー先頭から一定量ズレる(ズレ幅が変わらない) | 「音声の位置調整」フィルタが有効/音声オブジェクトの再生位置が0でない | 「フィルタ」→「音声の位置調整」のチェックを外す | 拡張編集の音声オブジェクトの設定ダイアログで「再生位置」を0に戻す |
| 第1層B | プレビューで、後半に行くほどズレ幅が広がる | 素材がVFR(可変フレームレート) | L-SMASH Works File Readerの設定で「VFR→CFR」を有効にし、素材のfpsを入力 | 素材を外部ツールでCFRに再エンコードしてから読み込み直す |
| 第1層C | 読み込んだ直後から映像と音声の長さが違う | AviUtlのシステム設定によるfps自動変換/最大フレーム数不足 | 「ファイル」→「環境設定」→「システムの設定」でfps自動変換系のチェックを外す | 最大フレーム数を動画長に足りる値へ引き上げ、AviUtlを再起動 |
| 第1層D | 特定の音声ファイルだけズレる/読み込めない | サンプリングレートの不一致(例:24kHz素材と48kHz設定) | 音声素材を48kHzに変換してから読み込む | 入力プラグインの優先度を変更し、別のリーダーで読ませる |
| 第2層A | 出力MP4の先頭から0.1秒未満の一定量ズレる | AAC等の音声エンコーダが構造的に持つ符号化遅延 | x264guiExの「ディレイカット」を「音声カット」または「映像追加」に設定 | 一度MKVで出力し、無劣化でMP4へremuxする |
| 第2層B | 出力MP4で、後半ほどズレ幅が広がる | プロジェクトfpsと出力fpsの不一致/VBR音源の混入 | 出力設定のfpsをプロジェクトfpsに合わせる | VBRのMP3等をWAVに変換してから読み込み直す |
| 第3層 | 手元では合っているのにYouTubeだけズレる | マスターファイルがVFR/音声と映像のトラック長が不一致 | CFRで書き出し直し、上書きではなく新規で再アップロード | 音声を無劣化ではなくAAC-LC 48kHzで固定し、コンテナをMP4に統一 |
| 環境要因 | 特定の端末・イヤホンだけズレる | 再生側の遅延(Bluetooth等)・ハードウェアデコード | 有線再生・別ブラウザで再確認 | ファイル側は正常なので編集ソフトの設定は変更しない |
この表の使い方でいちばん重要なのは、「一定量ズレる」と「だんだんズレる」を混同しないことです。一定量のズレはオフセット(開始位置の問題)なので、音声オブジェクトを数フレーム動かすだけで実用上は解決します。一方、だんだんズレるのは「時間軸の刻み方そのもの」がずれている状態なので、後ろに行くほど誤差が積み上がり、手動でオブジェクトを動かしても絶対に合いません。ここを取り違えて「手で少しずつ動かして合わせる」をやり始めると、10分の動画で数十回の微調整地獄に入ります。
第1層:編集中にズレる(読み込みとAviUtl設定)
結論:編集中にズレるケースの大半は、素材がVFRであることと、AviUtl側の「親切機能」による自動fps変換の2つで説明できます。
VFR素材をCFRに変換する(最頻値の原因)
スマホ撮影、OBSやGeForce Experienceなどの画面録画、配信アーカイブのダウンロード素材は、可変フレームレート(VFR)になっていることがあります。VFRは負荷に応じて1秒あたりのコマ数を変動させる方式で、ファイルサイズを抑えられる代わりに、CFR(固定フレームレート)前提で設計された編集ソフトでは時間軸の解釈がずれます。AviUtlは基本的にCFR前提なので、VFR素材を読むと「後ろに行くほどズレる」典型症状が出ます。
対処は2通りです。
方法1:L-SMASH Works側でCFR化して読む
- AviUtlの「ファイル」→「環境設定」→「入力プラグインの設定」→「L-SMASH Works File Readerの設定」を開く
- 「VFR→CFR」のチェックを有効にする
- 素材のフレームレートに合わせて分子・分母を入力する
- OKを押し、AviUtlを再起動してから素材を読み込み直す
入力値の対応は以下のとおりです。
| 素材のfps | 分子 | 分母 |
|---|---|---|
| 24fps | 24000 | 1000 |
| 30fps | 30000 | 1000 |
| 60fps | 60000 | 1000 |
| 23.976fps | 24000 | 1001 |
| 29.97fps | 30000 | 1001 |
| 59.94fps | 60000 | 1001 |
素材のfpsは、Windowsのエクスプローラーでファイルを右クリック→「プロパティ」→「詳細」タブの「フレーム率」で確認できます。ここが「29.97」ではなく「30」と丸めて表示されることがあるので、疑わしい場合はMediaInfoのような詳細表示ツールで確認したほうが確実です。
方法2:素材そのものをCFRに再エンコードする
HandBrakeなどの変換ツールで、フレームレートを「Constant Framerate(固定)」にして出力し、そのファイルをAviUtlに読み込みます。再エンコードなので画質は理論上わずかに落ちますが、以降の工程すべてが素直になるので、素材点数が多い長尺のゆっくり解説では結局こちらのほうが速いことが多いです。
うまくいかない条件も書いておきます。方法1は「元素材のfpsが分かっている」ことが前提です。配信アーカイブのように録画中にfpsが大きく変動した素材では、CFR化しても完全には合わないことがあります。その場合は方法2で作り直すか、後述の「そもそもズレない素材の作り方」に戻るしかありません。
AviUtl本体のシステム設定を見直す
AviUtl本体には、読み込み時にfpsを自動調整する機能があります。親切機能なのですが、これが誤作動して音ズレの原因になることがあります。
- 「ファイル」→「環境設定」→「システムの設定」を開く
- 「ロード時に29.97fpsに近いものは自動的に29.97fpsに変換する」のチェックを外す
- 「ロード時に映像と音声の長さが0.1秒以上ずれているものは自動的にfps調整する」のチェックを外す
- 「最大フレーム数」を確認する(初期値は320000。長尺を扱うなら余裕を持って増やす)
- OKを押し、AviUtlを再起動する
最大フレーム数は、60fpsで作業する場合は320000フレームでも約88分ぶんなので、長尺のゆっくり解説だと足りなくなることがあります。上限に達すると、素材の後ろが切れて映像と音声の長さが合わなくなります。ただし、この値を無闇に大きくするとメモリ消費が増えるので、必要なぶんだけ増やしてください。
「音声の位置調整」フィルタと音声オブジェクトの再生位置
「先頭から一定量ズレる」場合は、次の2か所を疑ってください。
- メニューの「フィルタ」→「音声の位置調整」にチェックが入っていないか。入っていれば外す
- 拡張編集の音声オブジェクトをダブルクリックし、設定ダイアログの「再生位置」が0になっているか。0以外なら0に戻す
この2つは数十秒で確認できるうえ、副作用がほぼありません。第1層Aの症状なら、他の設定をいじる前にここから見てください。
サンプリングレートを48kHzに統一する
映像側と音声側のサンプリングレートが違うと、音の速度そのものがずれます。動画制作では48000Hz(48kHz)に統一するのが無難です。L-SMASH Works File Readerの設定にもサンプリングレートの指定項目があり、ここを48000にしておくと素材側との食い違いを減らせます。
この論点は、ゆっくり・ボイロ系では特に重要になります。詳しくは後段の専用H2で扱います。
素材の読み込みと出力設定を全体として整えたい場合は、AviUtl ショート動画 出力設定の記事で、プロジェクト設定から出力までの数値を通しで確認しておくと、この記事の対処が二度手間になりません。
第2層:書き出した後にズレる(エンコードと出力設定)
結論:AviUtl上では合っているのに出力MP4だけズレるなら、原因はほぼ「音声エンコーダの符号化遅延」か「fpsの不一致」の2つです。AviUtl本体の設定をいじっても直りません。
音声エンコーダの遅延(ディレイカット)
AACなどの音声コーデックは、仕様上、エンコード時に先頭へわずかな遅延(プライミングサンプル)が入ります。公開情報では概ね数十〜120ミリ秒程度とされ、これが「先頭から一定量だけ音が遅れる」症状の正体です。
x264guiExには、この遅延を補正する「ディレイカット」という設定があります。選択肢と副作用は次のとおりです。
| 設定 | 挙動 | 副作用 |
|---|---|---|
| しない | 補正しない | 遅延ぶん、音が後ろにずれたまま出力される |
| 音声カット | 冒頭の遅延ぶんの音声を削る | 冒頭の音(無音でない場合)がわずかに欠ける |
| 映像追加 | 冒頭に数フレームの映像を足して辻褄を合わせる | 動画の先頭に2〜4フレーム程度が追加され、尺がわずかに伸びる |
どちらを選ぶかは作風で決めてください。ゆっくり解説や雑学ショートのように冒頭0.5秒で音が鳴り始める構成なら「映像追加」のほうが安全です。冒頭に確実な無音区間を置く構成なら「音声カット」で問題になりません。ショート動画では冒頭2〜4フレームの追加が「頭の間」に見えることがあるので、追加後は必ず先頭だけ再生して確認してください。
もう一つの回避策として、一度MKVコンテナで出力し、無劣化でMP4へremux(再多重化)する方法があります。再エンコードが入らないので画質・音質の劣化はありませんが、工程が1つ増えるうえ、remuxツールを別途用意する必要があります。ディレイカットで解決するなら、そちらを先に試すのが早いです。
fpsの不一致とVBR音源
「出力後、後半ほどズレる」場合は、次の2点を確認してください。
- 拡張編集のプロジェクト設定のfpsと、出力設定のfpsが一致しているか。30fpsで組んだプロジェクトを60fps指定で出力すると、時間軸の解釈がずれます
- VBR(可変ビットレート)の音源を素材に使っていないか。フリーBGM配布サイトのMP3にはVBRのものがあり、これをそのまま読み込むと再生位置の解釈がずれることがあります。疑わしければWAVに変換してから読み込み直してください
BGMやナレーションを複数トラック重ねている場合、どのトラックがVBRなのかを1本ずつ確認するのは手間です。疑わしいトラックを一時的にミュートするのではなく、タイムラインから外して1本ずつ出力し直すと、どの素材が原因かを確実に特定できます。手間はかかりますが、同じ素材を今後も使い回すなら一度やっておく価値があります。
出力側でよくある見落とし
- 音声コーデックがMP4に対応していない:MP4出力なのにコンテナ非対応の音声エンコーダを選んでいると、そもそも出力に失敗するか、想定外の挙動になります。MP4ならAAC系を選ぶのが基本です
- 編集中に素材ファイルを差し替えた:AviUtlは読み込み時のフレーム数情報を保持しているため、同名で長さの違うファイルに差し替えると、タイムラインと実体がずれます。差し替えたら必ず読み込み直してください
- PCスペックは原因ではない:プレビューが「カクつく」のとファイルが「ズレる」のは別問題です。スペック不足はプレビューの再生落ちを起こしますが、書き出されたファイルの同期そのものは崩しません。ここを混同して高いPCを買うのは、費用対効果として最悪の選択です
第3層:YouTubeにアップした後だけズレる
結論:手元のMP4が合っていてYouTubeだけズレるなら、原因はアップロードしたマスターファイルの性質です。YouTube側の設定でどうこうできる項目はほぼありません。
YouTubeはアップロードされた動画をサーバー側でトランスコード(再エンコード)します。このとき、マスターファイルがVFRのままだったり、音声トラックと映像トラックの長さが一致していないと、トランスコード結果で同期がずれることがあります。YouTubeのヘルプにもアップロード時の音声・映像の問題に関するトラブルシューティング項目が用意されており、この事象自体は既知のものとして扱われています。
対処の手順
- 手元のMP4のフレームレートを確認する。 CFRになっているかをMediaInfo等で確認します。「Frame rate mode: Constant」でなければ、そこが原因候補です
- CFRで書き出し直す。 AviUtlの出力設定でfpsを固定し、プロジェクト設定と一致させて再出力します
- 音声を48kHzのAAC-LCで統一する。 サンプリングレートが混在していると、トランスコード側の解釈が安定しません
- 既存動画に「差し替え」はできない。 YouTubeは公開済み動画の映像ファイルの差し替えに対応していません。新規アップロードとしてやり直し、旧動画は非公開にする必要があります。ここが第3層で一番痛いところで、公開してから気づくと再生数・コメント・被リンクをすべて捨てることになります
公開前に必ずやる確認
- 限定公開(未公開)でアップロードし、処理完了後に再生して確認する。アップ直後は低画質版のトランスコードしか終わっていないことがあり、同期の判断ができません
- スマホ実機で1回は確認する。PCブラウザとモバイルアプリで別のトランスコード結果が配信される場合があります
- Bluetoothイヤホンで確認しない。無線オーディオには構造的な遅延があるので、ファイルの問題と切り分けられません
独自視点として言い切っておくと、第3層は「直す」フェーズが存在しない層です。第1層・第2層は書き出し直せば済みますが、第3層は公開後に発覚した時点で動画そのものを取り直すか、数字をゼロから積み直すかの二択になります。したがって、第3層に対する唯一の合理的な対処は「公開前チェックを工程に組み込むこと」であり、これは次のH2の予防策と直結します。
ゆっくり・ボイロ系だけに起きる音ズレ
結論:VOICEVOXやAivisSpeechで大量の短い音声を書き出して並べるゆっくり・ボイロ系の作り方は、汎用の音ズレ解説が想定していない固有のズレ方をします。ここは他の解説記事がほぼ触れていない領域です。
合成音声WAVのサンプリングレートが低い
公開情報によると、VOICEVOXの音声書き出しは既定で24kHz・モノラルのWAVです。VOICEVOXの開発リポジトリでも、書き出しサンプリングレートやステレオ選択を設定できるようにする要望がIssueとして立てられており、2026年8月時点でアプリ本体から48kHzを直接選ぶ標準的な手段は確認できませんでした(配布形態やバージョンによって差がある可能性があるため、お使いのバージョンの設定画面を必ずご確認ください)。
一方でAviUtl側は48kHz運用が無難です。ここに食い違いがあると、1本1本の音声はごく短いので体感できないズレでも、100本、200本と並べたときに累積して数秒単位のズレになることがあります。
対処は次のとおりです。
- 書き出したWAVを、まとめて48kHzへリサンプリングしてからAviUtlに読み込む(Audacityやffmpegなどでバッチで処理できます)
- AviUtl側のL-SMASH Works設定のサンプリングレートを48000に固定する
- 「1話ぶんの音声を1本のWAVに連結してから読み込む」運用に切り替える。オブジェクト数が減るぶん、累積誤差の発生源そのものが減ります
3番目は編集の自由度と引き換えになるので、字幕の細かい出し分けをする作風には向きません。「ズレやすさ」と「編集の細かさ」はトレードオフである、という前提で作風を選んでください。
無音カットと「聞こえないズレ」
テキスト読み上げの前後には、合成エンジン側が無音区間を付けることがあります。この無音を自動カットするツールを通すと、カット量が音声ごとに微妙に違うため、字幕オブジェクトの表示タイミングだけがズレるという症状が出ます。音声は自然に聞こえるのに、口パクや字幕が微妙に早い・遅い、という違和感の正体はたいていこれです。
対処は、無音カットをかけるタイミングを「AviUtlに読み込む前」に固定し、カット後のWAVの実長を基準に字幕タイミングを決めることです。読み込み後にカットすると、タイムライン上の位置と実体がずれます。
キャラクターの掛け合いを組むところから見直したい場合は、ボイスロイド実況 作り方で扱っている台本→音声→タイムラインの流れを、この「読み込み前に確定させる」原則で組み直すと、音ズレの発生源をかなり減らせます。
ゆっくりムービーメーカー(YMM4)連携時のズレ
ゆっくりムービーメーカーからAviUtlへ渡す構成では、YMM4側のプロジェクトfpsとAviUtl側のプロジェクトfpsの不一致が代表的な原因として挙げられています。YMM4で30fps、AviUtlで60fpsといった組み合わせだと、渡した時点で時間軸の解釈がずれます。
確認手順は次のとおりです。
- 素材動画の実fpsを確認する
- YMM4のプロジェクト設定のfpsを、その値に手動で合わせる
- AviUtlの拡張編集のプロジェクト設定のfpsも同じ値に合わせる
- 出力設定のfpsも同じ値にする
- この4つが一致していることを確認してから作業を始める
また、YMM4側で動画を扱う際のコンポーネント選択によってfps情報が正しく取得できず、ズレの原因になるという報告があります。ここはバージョン依存の要素が大きいので、「YMM4単体で再生した時点でズレているか」を必ず先に確認してください。YMM4の時点でズレているなら、AviUtl側をいくらいじっても直りません。
YMM4からの出力設定そのものを詰めたい場合は、ゆっくりムービーメーカー 動画出力 設定で、fps・解像度・音声設定の推奨値を先に固めておくのが確実です。
「直す」より安い:そもそもズレない素材の作り方
結論:音ズレは「発生してから直す」より「発生させない工程にする」ほうが、時間コストで見て圧倒的に安いです。特に週に複数本出す副業運用では、1本あたり30分の切り分け作業が積み上がると致命的になります。
これがこの記事の3つめの独自視点です。ここまで書いてきた対処法は、どれも「1本の動画を救出する」ためのものでした。しかし顔出しなし副業でYouTubeを回す場合、本当に効くのは素材の入口を統一して、音ズレが構造的に起きない状態にすることです。
素材取り込みチェックリスト
新しい素材を扱う前に、以下を確認してください。すべて「編集を始める前」に済ませるのがポイントです。
- [ ] 画面録画・ゲーム録画は、録画ソフト側で固定フレームレート(CFR)を選んでいる(OBSなら「出力」の録画設定でCFR側を選ぶ)
- [ ] 録画fpsを、チャンネル全体で1つに固定している(30fpsか60fpsのどちらかに決める。混在させない)
- [ ] 音声のサンプリングレートを48000Hzに統一している(録画ソフト側の設定も48kHz)
- [ ] ダウンロード素材・スマホ撮影素材は、取り込み前にMediaInfo等で「Frame rate mode」を確認している
- [ ] VFRだった素材は、編集前にCFRへ変換してから素材フォルダに入れている
- [ ] 合成音声のWAVは、書き出し後に48kHzへリサンプリングする工程を通している
- [ ] フリーBGMのMP3は、VBRかどうかを確認し、疑わしければWAVに変換している
- [ ] AviUtlのプロジェクト設定fpsと出力fpsが、テンプレートとして固定されている
- [ ] 出力後、ローカル再生で先頭・中盤・末尾の3点を確認する工程が手順書に入っている
- [ ] YouTubeには限定公開で先に上げ、処理完了後にスマホで1回確認している
このチェックリストの本質は、「fpsとサンプリングレートを、チャンネル単位で1組の数値に固定する」という一点に集約されます。素材ごとに数値が違うことが、あらゆる音ズレの根本原因だからです。BGM選定の段階から出力形式を揃えておきたい場合は、YouTubeオーディオライブラリ 使い方で扱っている素材の落とし方をベースに、取り込み時の変換工程をルーチン化しておくと管理が楽になります。
工程そのものを見直す選択肢
もう一段踏み込むと、「AviUtlで全部組む」以外の選択肢を、本数や尺に応じて使い分けるという考え方もあります。特に雑学ショートのような短尺・量産型のコンテンツでは、編集の自由度よりも1本あたりの制作時間のほうが効いてきます。
たとえば、次のような使い分けが考えられます。
| 工程 | 向いているもの | 音ズレリスク | 制作時間の目安 |
|---|---|---|---|
| AviUtl(拡張編集)で全編組む | 10分以上の解説、演出を作り込む長尺 | 素材が混在するほど高い | 長い(数時間〜) |
| ゆっくりムービーメーカー中心 | 掛け合い中心のゆっくり解説 | fps不一致に注意すれば低め | 中 |
| Web完結のショート生成ツール | 30〜60秒の雑学ショート量産 | 素材取り込み工程がないため低い | 短い |
3つめの選択肢として、当サイトが開発・運営しているShortyのような、ブラウザ上でショート動画を組み立てるツールもあります。素材を手元で読み込む工程が発生しないぶん、VFR起因の音ズレの発生源自体が減るのが利点です。ただし無料プランには明確な制約があり、1本30秒まで・30日で5本まで・保存期間7日・ショート形式のみです。10分の解説動画や、凝った演出を1フレーム単位で詰める編集には向きません。AviUtlのほうが表現の自由度は圧倒的に高いので、長尺の作り込みはAviUtl、短尺の量産はWeb系ツールというように、尺と本数で使い分けるのが現実的です。どちらが最良かは作風と投稿頻度で変わります。
雑学ショートの企画そのものから設計し直すなら、雑学動画 作り方の構成の考え方と合わせて、素材の統一ルールを最初に決めてしまうのが早道です。
AviUtl2世代で変わったこと・変わらないこと
結論:AviUtl2(AviUtl ExEdit2)では拡張編集が本体に統合され、入力周りの構成が変わりました。ただし「fpsとサンプリングレートを揃える」という音ズレの原則そのものは変わっていません。
公開情報にもとづく2026年8月時点の状況は次のとおりです。
- AviUtl本体(従来版):version 1.10(2019年10月3日公開)。長らく更新が止まっていた系統です
- AviUtl ExEdit2(AviUtl2):version 2.1.6a(2026年8月22日公開)。2025年に新しく作り直された系統で、更新が続いています
AviUtl2で音ズレに関係する変更点として押さえておくべきは以下です。
- 拡張編集が本体に統合された。 従来は「AviUtl本体+拡張編集プラグイン」という二層構造で、本体側のシステム設定と拡張編集側のプロジェクト設定の両方にfps関連の項目があり、これが混乱の元でした。統合により設定箇所の把握はしやすくなっています
- 内蔵のWindows Media Foundationが削除された(beta10以降)。 この影響でMP4などの主要ファイルを読むにはL-SMASH Worksが実質必須になりました。つまり、AviUtl2でもVFR→CFR設定はL-SMASH Works側で行うことになります
- L-SMASH Worksの設定項目に注意が必要。 「Libav+L-SMASH」をオフにしないと特定のファイルが読めない、動作が重くなるといった報告があります。読み込み自体が不安定だと、音ズレ以前の問題として素材の長さが正しく取れません
一方で、変わっていないことのほうが重要です。
- VFR素材はCFRに直してから読む
- サンプリングレートは48kHzに揃える
- プロジェクトfpsと出力fpsを一致させる
- 音声エンコーダの遅延は出力側の設定で補正する
この4原則は世代が変わっても有効です。逆に言えば、AviUtl2に乗り換えたからといって音ズレが自動的に解決するわけではありません。乗り換えを検討している場合、プラグインの対応状況やスクリプトの互換性のほうが判断材料として大きいので、「音ズレを直すためにAviUtl2に移行する」という動機はおすすめしません。移行そのものにコストがかかるうえ、既存のプロジェクトファイルや使い慣れたスクリプトが使えなくなるリスクがあります。
なお、AviUtl2の細かい仕様は更新が続いている領域なので、具体的な設定項目名や既定値は、必ずお使いのバージョンの公式配布ページと同梱ドキュメントで確認してください。この記事の記述は2026年8月時点の公開情報にもとづくものです。
よくある質問
AviUtlの音ズレで最初に確認すべき設定はどれですか?
「フィルタ」→「音声の位置調整」のチェックと、拡張編集の音声オブジェクトの「再生位置」が0かどうかの2点です。数十秒で確認でき、副作用もほぼありません。
先頭から一定量ズレるタイプの症状なら、この2点だけで解決することがよくあります。逆に「後半ほどズレ幅が広がる」症状にはこの2点は無効なので、その場合はVFR起因を疑ってL-SMASH Worksの設定に進んでください。確認の順番を間違えると、無関係なグローバル設定を書き換えて他のプロジェクトまで壊すことになります。
だんだんズレていくタイプの音ズレは、手作業で合わせられませんか?
現実的ではありません。時間軸の刻み方そのものがずれているため、1か所合わせても後ろでまたずれます。素材のCFR化かfpsの一致で根本から直してください。
手動調整が有効なのは、ズレ幅が最初から最後まで一定の場合だけです。この見分け方は簡単で、動画の冒頭・中盤・末尾の3点で同じ「口の動きと音の差」を測り、差が広がっていくならCFR化が必要、差が同じならオブジェクトを動かせば済む、と判断できます。
VFRかCFRかはどうやって確認しますか?
MediaInfoなどの詳細表示ツールで「Frame rate mode」の項目を見ます。Variableと出ればVFR、ConstantならCFRです。エクスプローラーのプロパティでは判別できません。
Windowsのプロパティの「詳細」タブでは「フレーム率」の数値しか出ず、それが固定なのか可変なのかは表示されません。スマホ撮影素材や画面録画素材を扱うなら、MediaInfoを1本入れておくと切り分けが一気に速くなります。無料で使えます。
VOICEVOXの音声をAviUtlで使うとき、48kHzに変換すべきですか?
公開情報では既定が24kHz・モノラルとされているため、48kHzに揃えておくほうが無難です。特に短い音声を大量に並べる構成では、累積ズレの予防になります。
変換はAudacityの一括処理やffmpegのバッチで済みます。ただし、1本ずつのズレは通常ミリ秒未満なので、10本程度しか使わない動画なら体感できないこともあります。100本以上並べる長尺のゆっくり解説で、この工程の効果が出やすいと考えてください。
出力したMP4の先頭だけ音が遅れます。どうすればいいですか?
AAC等の音声エンコーダが持つ符号化遅延が原因です。x264guiExの「ディレイカット」を「音声カット」または「映像追加」に設定して出力し直してください。
「音声カット」は冒頭の音声を遅延ぶん削るので、冒頭に音がある構成では欠けます。「映像追加」は冒頭に2〜4フレーム足すので尺がわずかに伸びます。ゆっくり解説のように冒頭すぐ喋り始める構成なら「映像追加」のほうが安全です。どちらも出力後に先頭を再生して確認してください。
YouTubeにアップした動画だけズレます。アップし直さずに直せますか?
直せません。YouTubeは公開済み動画の映像ファイル差し替えに対応していないため、CFRで書き出し直して新規アップロードし、旧動画を非公開にするしかありません。
そのため、公開前に限定公開でアップして処理完了後に確認する工程を入れておくことが、実質的に唯一の対策になります。処理完了前に確認すると低画質版しか出来ておらず判断できないので、必ず処理が終わってから確認してください。
PCのスペックが低いと音ズレしますか?
書き出したファイルの音ズレとは無関係です。スペック不足はプレビューの再生落ち(カクつき)を起こしますが、出力されるファイルの同期は崩しません。
プレビューがカクついているだけの状態を「音ズレ」と誤認して高性能PCを買うのは、費用対効果として避けたい選択です。判断は必ず「書き出したMP4をローカル再生してどうか」で行ってください。プレビューの快適さのためにPCを強化するのは合理的ですが、それは音ズレ対策ではありません。
ゆっくりムービーメーカーからAviUtlに渡すとズレます。どこを見ますか?
まずYMM4単体の再生でズレているかを確認します。YMM4の時点でズレているならAviUtl側は無関係で、素材fpsとYMM4のプロジェクトfpsの不一致を疑ってください。
YMM4では合っているのにAviUtlでズレるなら、AviUtlの拡張編集のプロジェクト設定fpsと出力設定fpsを、YMM4と同じ値に統一します。素材fps・YMM4・AviUtlプロジェクト・出力の4つの数値をすべて一致させるのが原則です。
AviUtl2に移行すれば音ズレは解決しますか?
解決しません。AviUtl2でもVFR素材のCFR化やサンプリングレートの統一は同じように必要で、むしろL-SMASH Worksが実質必須になっているぶん、入力プラグイン設定の重要性は上がっています。
AviUtl2への移行は、拡張編集の統合や動作の刷新といった別のメリットで判断すべきです。音ズレを動機にした移行は、プラグインやスクリプトの互換性で新しい問題を抱えるリスクのほうが大きくなります。
フリーBGMを入れたときだけズレます。原因は何ですか?
VBR(可変ビットレート)のMP3である可能性があります。WAVに変換してから読み込み直すと解決することがあります。
配布サイトのMP3は圧縮率を稼ぐためVBRになっていることがあり、AviUtlが再生位置を正しく解釈できない場合があります。BGMを複数使っているなら、1本ずつ外して切り分けるより、全部まとめてWAV化してしまうほうが早いです。容量は増えますが、編集中だけの話なので実害は小さいです。
まとめ
AviUtlの音ズレは、原因のリストを上から順に試すのではなく、「編集中/書き出し後/YouTube後」の3層に切り分けてから対処するのが最短ルートです。
要点を整理します。
- 切り分けが9割。 プレビュー、ローカル再生、YouTube再生の3か所で確認すれば、原因候補は10個から2〜3個に絞れる
- 「一定量ズレる」と「だんだんズレる」を混同しない。 前者はオフセットなので手動調整でも実用上直るが、後者は時間軸の刻み方の問題なので、CFR化やfps一致でしか直らない
- 第1層(編集中)は、VFR素材のCFR化、システム設定のfps自動変換オフ、音声の位置調整フィルタ、サンプリングレート48kHz統一の4点
- 第2層(書き出し後)は、x264guiExのディレイカット設定と、プロジェクトfpsと出力fpsの一致
- 第3層(YouTube後)は、公開後に発覚すると取り返しがつかない。限定公開での事前確認を工程に入れるしかない
- ゆっくり・ボイロ系は固有のズレ方をする。 合成音声WAVのサンプリングレート、無音カットのタイミング、YMM4とのfps不一致の3点を先に潰しておく
- 最終的には「直す」より「ズレない工程にする」ほうが安い。 fpsとサンプリングレートをチャンネル単位で1組に固定するだけで、音ズレの大半は発生源から消える
うまくいかないケースも正直に書いておくと、録画中にfpsが大きく変動した配信アーカイブ素材や、元から音ズレしているダウンロード素材は、AviUtl側の設定では完全には救えません。その場合は素材を作り直すか、その素材の使用箇所を短く切って使うほうが、時間コストとしては合理的です。
顔出しなしYouTubeを副業として回すなら、1本あたりのトラブル対応時間がそのまま利益率に効いてきます。この記事のチェックリストを一度手順書に落として、素材の入口を固定してしまうことをおすすめします。なお、AviUtl・AviUtl2・各プラグインは更新が続いているため、設定項目名や既定値は必ずお使いのバージョンの公式ドキュメントで確認してください。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづいています。